高麗人参とその他の人参の違いについて

現在も生薬として漢方に利用される高麗人参のほかにも、その有用成分であるジンセノサイドを含む薬用の人参が存在します。
それらも高麗人参と同じような方法で利用されたりするものの、主にジンセノサイドの種類や量の違いによって作用や効能が異なっているのです。
この記事では、高麗人参以外の薬用人参についてご紹介します。

高麗人参と食用のニンジンとの違いについて

高麗人参には『人参』という名前がついているため、食用にされるニンジンとはなにが違うのか、疑問を持つのではないでしょうか。
共通点を挙げれば、見た目が少々似ていることや、主に利用するのは地中に埋まった根の部分という程度にとどまっています。
高麗人参は根の部分が人体の形に似ている点と、1年ごとに1枚ずつ葉をつける点などが特徴です。
野菜のニンジンはアフガニスタン原産のセリ科に属し、薬草として用いられる高麗人参はウコギ科に属するため、分類学上で両者はまったく異なる植物なのです。
漢字表記では、ともに人参という名詞で表記するものの、野菜のニンジンの、生物の種の特徴を表す種小名『carota』に由来した英語での表記は『carrot』である一方、高麗人参は『ginseng』と呼ばれており、世界的にはよりはっきりと区別されています。

世界に存在する主な薬用人参の種類について

高麗人参のほかにも、世界には一般に薬草、もしくはサプリメントなどの健康食品の原料として用いられる人参が存在します。
ここでは、その主な3種類の特徴や高麗人参との違いなどをご紹介します。

西洋人参(別名・アメリカニンジン)

アメリカニンジンとも呼ばれる『西洋人参』は、北アメリカ東部が原産で、高麗人参と同じウコギ科に属する薬用人参です。
形は円錐形をしており、幅の広い卵のような葉を5枚つけます。
古来、北アメリカの先住民が根と葉を薬草として用いた歴史があり、現在では生薬として漢方にも利用されています。
もともとは17世紀末に中国の人参の効能がヨーロッパにもたらされて以降、18世紀初頭に南部カナダで宣教師により発見された経緯があります。
東洋医学における生薬の基本的性質である薬性において違いがあり、高麗人参は身体を温める『温性』です。
一方、西洋人参の薬性は、体内の余分な熱を冷まし身体にうるおいを与えるという『涼性』で、この働きの特徴を活かしてイライラや情緒不安、のどの渇きや夏バテ、ほてり・のぼせといった症状の改善に用いられています。
西洋人参にも高麗人参と同様に、有用成分としてジンセノサイドが含まれているものの、高麗人参に比べて作用が小さいとされています。
とはいえ、その穏やかな作用により、身体に活力を与えながら中枢神経の興奮を抑え、特に中老年世代が長期的に摂取すると、体力の改善などが期待できるといいます。

三七人参(別名・田七人参)

三七人参(さんしちにんじん)とは、高麗人参と同じウコギ科トチバニンジン属の多年草で、中国の雲南省から広西省が原産地となっています。
広西省の田陽や田東という地域で生産されることから『田七人参(でんしちにんじん)』や、金に換えられないほど貴重な価値があるという意味で『金不換(きんふかん)』と呼ばれたりする場合もあります。
種まきから収穫まで3年から7年という年月を要するため、栽培が非常に難しい点で高麗人参によく似ています。
また、中国では古い時代から薬用とされ、副作用の心配がなく、長期間の服用でも人体に悪影響を及ぼさない最高位の『上薬』に分類されるなど、貴重な生薬として漢方で扱われてきました。
三七人参にも数多くのジンセノサイドが含まれており、主な働きとして、肝機能や免疫力の向上、血行を改善する作用やホルモンバランスの整調作用などが挙げられ、高麗人参と似たような効能をもたらすと考えられています。
一方で、高麗人参が含む抗炎症作用を持つ特定の成分が三七人参には含まれていないなど、若干の違いが存在するものの、高麗人参の代替品のような働きをするともいえます。

竹節人参(別名・トチバニンジン)

トチバニンジンの別名で知られる『竹節人参(ちくせつにんじん)』は、日本原産の薬用植物で、北海道から本州、四国や九州に分布し、生薬として用いられます。
高麗人参と同じウコギ科トチバニンジン属の多年草で、外見は高麗人参に似ているものの、根の形が竹の節のように横に結節が走っていて、竹の根茎に似ていることから竹節人参といいます。
また、葉がトチノキの形に似ていることから、その和名がつけられています。
竹節人参も数種類のジンセノサイドを含むサポニンのほか、特有のチクセツサポニンという成分を含んでいて、咳や痰を抑える作用や、高い解熱作用のほか、胃腸を丈夫にする働きや、止血や打撲への効能などが備わっています。
高麗人参に比べると新陳代謝の機能は劣るものの、痰を切る作用や解熱に優れ、特に寒い時期に出る痰がからむ咳に有効とされています。
竹節人参は煎じたものをお茶として飲んだり、生の根茎をホワイトリカーに浸して薬酒にしたりなど、高麗人参と同じような用途が一般的です。